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映画自体はあまり観る方ではないが、好きな映画はいくつある。なかでも一番はずっと変わらない。それが岩井俊二監督の「花とアリス」だ。

当時15歳の私はまだ家のパソコンがブラウン管のように大きかった頃に花とアリスに出会った。

元々はキットカットのCMを見て知り、その続きを家のパソコンでキットカットのHPから観たのが最初だった。当時はちょうど高校に入学したタイミングでもあった。

特に好きだったシーンが花が先輩を好きだと自覚して思わず走って帰るシーンだった。本当に花と同じくらいのタイミングで私はクラスメイトを好きになった。

その後、劇場映画になったものの私の住んでる町の映画館ではもちろん上映されることはなく、観たのはDVDが出てからであり、さらに言えば当時お金がなくてDVDが買えるわけもなく(そもそもDVDを観るデッキがなかったかもしれない、いやむしろVHSで観たのかもしれない…ここに関しては思い出せない) 貧乏性で新作で借りることもできず、ようやく観たのは18歳くらいと思われる。

花とアリスのどこがいいかと聞かれたら、映像美はもちろんキャストの自然な演技や空気感、音楽、全てにおいて好きと言える。

でも一番だと言える理由は何度観ても何度もはじめての感覚で観れるところにある。決して内容を忘れてるわけではなくて、いつでもはじめて観た15歳に戻れるという感覚に近い。大人になったら見方が変わる映画もあるけれど、この映画だけはそれがない。自分の心の一番深いところにずっと残ってる、上書きされることもなく、書き換えられることもなく、ずっとあるもの、それが花とアリスだった。

それから少しずつ岩井俊二監督の作品を少しずつ観るようになった。特にスワロウテイルリリイ・シュシュのすべてを10代の頃に観た影響はとても大きかった。私が10代の頃はSNSも今ほど発展もしておらず、岩井俊二監督に関しては自分で見つけて、自分で観るようになった。

写真をはじめた頃、有名な写真家すら知らなかったけれど、心の底に花とアリスをずっと大切にしまって生きていた。それが私の撮りたい世界であり、目指したい世界だったかもしれないと今になって思う。