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次の仕事が決まっても出勤できないため毎日を家で過ごしている。今までの生活があまりにもひどいものだったから、自炊したり、掃除したりしてる今の生活の方が日常に近いのかもしれない。

でもほんとうにそれが私の日常なのだろうかと考えるとやはり違うと気付く。小さい頃は家の中で過ごすことがとても好きだった。けれど自由を手に入れてから私は外の世界を知るようになって、いいことばかりではないけれど、それなりに楽しかった。なにより人に会うことができた。

今は誰にも会うことがない。元々あまり人には会わないけれど、誰かと一緒に食べるごはんがおいしいことを私は知っている。

少しずつ今の生活に慣れてまった自分が情けなく、明るいフリをしてた自分が本当は不安でいっぱいだったことに気付いて涙が出た。

先のことを考えると不安で押しつぶされそうになる。そして自分には何もないことに気付く。でも私よりつらい人はたくさんいるからこのくらいで弱音吐いちゃだめだと自分に言い聞かせる。

ベランダで冬に植えた球根が芽を出してきれいな花を咲かせてる。あの頃はこんな春が来るなんて思ってなかった。どんなにつらいことが続いても花は咲き、そしていつかは枯れてしまう。どんなにかなしいことがあっても時間は経ち、新しい季節は来る。

いつも失ってから大切なものに気付く。

だから私は何も守れない。