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昔好きだった人のことを忘れてしまいそうになったことをきっかけに、15歳の時に日記を書くようになった。この日の出来事を気持ちを忘れないようにと毎日ではなかったけれど、何かあれば必ず書くようにしていた。

今でも日記を書いていた10代の頃の記憶は本当に鮮明で、昨日のことよりも覚えている。

それなのに20歳になってからはほとんど日記を書かなくなった。そのせいかその辺りの記憶はほとんどない。ちょうど20歳頃から働くようになり、遊ぶことも誰かに会うことも少なくなり、毎日が苦痛でしかなかった。何も覚えていたくないと思ってたら、何も書く気にはなれず、時間が経てば忘れるようになっていた。

 

今の自分を作ってるのは何だろうなんてあまり考えたことはなかったけれど、間違いなく過去の記憶はあると思った。でも忘れてしまった記憶はどこにいくんだろう。私に成れなかった記憶、消した記憶はと考えても答えは見つからない。

でも私を成してるのは記憶だけではないかもしれない。そう気付いた。毎日の生活、繰り返す日々の中に思いがあることを。その思いが私を成している。そう思えたら少し安堵したのか、泣きそうになった。たとえ忘れてしまっても、一瞬でも思い出すことがある。あの日の月が綺麗だったことを、私は昨日のことよりも鮮明に思い出す。